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page d-63  短編小説

曲をつくる時、唄う時、
ハートの形をした、
巨大な感情タンクを、
真ん中からすとんと割って、
その断片をじっと見ている気になる。



それは時に澄んだ青そらのようにも見えるが、
単に、毛細血管がはりめぐった器官に見えることもある。
模様のバリエーションは無限で、
どこの惑星よりも広い空間で、
ひとときも同じ形を残さない。
模様をつくるのは、思い出なのか、今の気持ちなのか、
むかし、こんな想いがあったような、なかったような、
時には大げさに青春しているふりをして、
だから感情はやっかいだと思いながら、
実は大事に抱きしめている。
あつくるしいのは苦手だが、
それは単に共感できないあつくるしさだからだ。
自分のものについては、
おそらく後で「やっていた」ことに気づく。
ど真ん中で感動している時には、もう遅い。
自分も相当あつくるしい。




感情の断片。
人間の細かい表情や仕草がみせた、
色合いと、質感が、自分の断片と似すぎて、
わたしのものとなる。
なにも起こらない短編小説のなかに散らばる、
たとえばソファーの隙間にぴったりはまって気持ちいい指のような、
ちっさく深い共感が、
心の宝箱の鍵をそっと開けて、
ずっとずっと、居座るのだ。















愛と、人間の、なんと情けないこと。


映画「パリ、ジュテーム」を観た。
様々な監督の、パリの街角を舞台にした5分のショートムービーをつなぐ。
もっと映像がテクニカルだったり、
ファッション色の強いものかと先入観があったが、ちがった。
絵はがきを繋いだようなイメージのパリ、をこえて、
等身大のパリがある。
憧れのパリではなく、愛着のパリである。
そして、まさにパリが20区、エスカルゴ状に成っているように、
感情の断片が、陰ったり光ったりしながら、各地で渦を巻く。
からまったままの、ビーズのネックレスのように。


キラリと見えた、断片の、なんてうつくしいこと。

これ、わたし、好きだ。
結婚記念日の近い両親にチケットをわたした。













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3月7日、2マンライヴにお越し下さった方、
本当にありがとうございました。
また遊びにきてくださいね。
21日は大阪に行きます。
目標は、
一曲一曲を、短編小説のように。

頂きもの、スコーンとジャムと午前11時
by akiha_10 | 2007-03-10 19:28 | Daily thinking
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