『うおーきもい、村上さん、テレビチャンピョン出れるよ!』 「職業病ですよぉ…イエンセン、北欧パン特集でやりましたもん。 最近、食パンなら、ききパンできそうな自分がこわいです…」 『それ、すごいね、極めてるってほんと、かっこいいよ』 「としこさんは何か、今まではまったもんはないんですか?」 『うーん、広くて浅いから中途半端なんだよね、ぜんぶ。 ミーハーだからね。村上みたいに、なんでもいいから極めてる人に憧れる』 「えー。としこさんも、誰かに憧れるんですね」 『え。そんな、私って自信まんまん??』 「いや、揺らがないっていうか。落ち込んだり迷ったりしたところ見た事ないから」 『職業病だよ〜、上を演じてるだけだよ。私が不安がってたら、みんな不安でしょ、 強気ぶってるだけ。会社とか、とっぱらったら、ただの人だし… でもさ、あまりにも仮面をかぶっている時間が長いとさ、それが定着するんだよね、口調とか仕草とか、それこそ職業病。知らないうちに、自分の境界壁がどんどん高くなっていってる気がする。地元の友達とか会うと、たまに自分がどんな人だったか、忘れてるような気がするんだよね…でもさ、それは過去の自己イメージであって、それが素顔っていうのも違うんだよねぇ。素顔とかって、あるようでないかもしれないし。これは本当に自分じゃないって思いたいだけかもしれないし…。人は時間と環境で変わるのか、変われないのか、とか非常に気になるところなの、いま』 「もんすっごい、自問自答ですね」 『ああ、そうそう、誰かにただ喋りたいだけ。適当に聴きながしてよ』 「へえ、迷い無く仕事が生きがい、みたいに見えたんですけど、 そんなこと考えてたんですねー」 『うーん、売り上げとか企画とか、具体的な悩みで頭が忙しかったら余計なこと考えないし、 楽チンなんだよ。ふっと襲われる隙間が一番こわい。 考えたところで、なにも変わらないのに、襲われる。 だから忙しくすんの。これも防御なのよ。 私とおなじ、村上もがんばっちゃうオトコンナだから、 いつかふっっと襲われる時がくるよ、きっと。立ち止まるのがこわくなんの』 「はあ…今はピンとこないな… ちょっっと、としこさん、ペストリーちぎっって食べる人はじめて見ましたよっ、 パイ生地が重なっている意味ないじゃないですかぁ… ミルフィーユを一枚ずつはがすような食べ方して!ぼろぼろこぼれてますよっ」 ツルルルールルルルールルルルー 『ああ、そう?へん?お。妹からメールきた』 「としこさん、意外。モリコーネですか」 『彼氏がね、ニューシネマパラダイス大好きでね、この着信はおそろなの。 いるもんだよね、私のたっかく積み上げたプライドとかこだわりとか、 ぶっこわして入ってくる人がね、 私一人だったら、絶対これ選ばないもん。 かったい境界壁をぴょんっと飛び越えてさ、私を丸めこむんだよ。悔しいけど嬉しかったり。 素顔も仮面もなんもない、全部自分、ってなれんの。 この音が、唯一の期待なんだな。一人じゃないかもっていう』 「んー、ちょっといい話じゃないですか!万事順調じゃないですか」 『そう?毎日少しずつ淋しいよ。 あ、ちょっとメール返していい? なーんか最近は妹うかれてんだよねー 誰だか知らないけど、 おそろいのキリンのサファリストラップとかつけちゃって、 まあ、姉も姉なら妹も妹…おそろい好き。あは』 「…へえ…」 『さ、私行くけど、まだいる?うわ、けむいね、窓あけとこ』 「いや、もうちょっとしたら行きます」 『じゃね』 「あ、としこさんっ。としこさんの妹さんってぇ…、」 『ん?』 「いやっ、なんでもないです、私コーヒー飲みこんだら行きますから…」 (fin) 今月のパン イエンセン@代々木八幡
by akiha_10
| 2006-04-28 23:46
| monthly
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瓜生明希葉/INFORMATION
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