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小雪舞うモノクロの道を歩く。page  t-32           into Snow 4_a0028990_21385860.jpg
天文時計のまわりには人だかりができていて、
まもなく1時をしめそうとするその時に、
なかが起こるのだろうとすぐに察知できた。
ならば待ってみようと、
寒い場所での3分の長さを足踏みをして紛らわす。



時計の針は注目を浴び、
観衆の心のカウントダウンが聞こえるようだった。
さん、にい、いちっ!




高まる期待は、すぐに微妙な空気に代わった。
荘厳なつくりにして、仕掛けが質素。
時計があいて、人形踊って、音楽じゃーん、みたいなのはなかったの。
全然スペクタクルじゃなったの。
時計の横の死神(こわいよ)がちょちょっと動いて、
上らへんの小窓がひらいて、小さいおじさんがチラチラ見え隠れ。
「えっ、おわり!?」カウントダウン同様、観衆の心の声がはもった。
皆、少しいぶかし気に、なんとなく苦笑いしながらその場を去って行く。
時計よりね、世界共通のテンションの動きとリアクションのほうが
なんとも面白かったのです。
後に調べてみると、この時計15世紀につくられたようで、
本当は動いているだけで見物なのね。
あと、小窓のかくれんぼおじさんはキリスト12使徒とかいう
なにやら崇高な人だったようで、
しょぼい?とか思ったらバチがあたりそう。
わたし、そんなこと心にも思ってないです。



夕方むかったのは美術工芸博物館。
チェコの綺麗な食器や装飾品と工芸品、
印刷技術とともに発展した広告デザインなどがあります。
目を奪われたのはアンティーク壁掛け時計と円状のレース。
こんなところ、誰が見る?と思うような細かい作業を施しているものも、
誰かは見ていて、感動するもんね。
期間限定の展示物がオペラ歌手マリアカラスが
実際に身につけたスワロフスキーだったことはラッキーな出来事。
映画「永遠のマリアカラス」では
壮麗なカラスを演出するシャネルの衣装がとても印象的でしたが、
特にステージにおいては、装飾品としてスワロフスキーを好んだようです。
ショーケースを囲んでうっとりしている人たちのほとんどが女性なのは、
世界共通の、女性のジュエリー好きを語っているのでしょうか。
暗室に置かれた目を細めんばかりのスワロフスキーの輝きが、
映画で感じとれた栄光と対極にあるカラスの孤独をいっそう強調するようで、
光と陰は相互に不可欠である図がここにあるのです。


相変わらず現在時刻も分からず、帰りに美術館内のカフェに入ります。
カウンターで隣になったおじいさんの真似をしてホッとワインを頼んでみる。
メニューを置いて、ふっと見上げた瞬間、
目に飛び込んできたのは、壁一面の時計。それは壁を埋めつくすほどの数。
しかも。それぞれの時間で動いているものもあれば、止まっているものもある。
つまり、現在を刻むものがどれか分からない。
一瞬わたしは固まってしまう。
時間の感覚を失った睡眠を経て、
時計のないホテルと、正解の分からぬ時計だらけの部屋。
ゾクっとした。
壁一面の時計は、カウンターのわたしに挑戦的。
時刻を意地でも見せない一連のできごと。
これは何かのメッセージかとロマンチックにならざるをえないのです。
それがまた雲の低い中世の街にあまりに合い過ぎて、
これは時間をトリップしているのではと、本気で思いこみそう。
嘘のようで、本当に起こった仕組まれた一日。
シナモンの効いたホットワインで高揚し、ますますワンダー感は深まるばかり。
そうだ、この日は気合いで撮った天文時計のほか、ほとんど写真がないんだもの。





スーパーテスコで夜御飯とデザートの苺と、page  t-32           into Snow 4_a0028990_2142711.jpg
一番安い、いけてない時計を買って帰ります。
こちら美術工芸博物館で買ったチェコマッチ。
○mni-busステッカーに同封して、
5人の人へのプレゼント。
仕組まれた日のチェコマッチでアロマキャンドルでもつけたなら、
夢でプチトリップ、そして次の日時計は止まっているかも。
by akiha_10 | 2006-03-15 22:30 | Trunk
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