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page m-8  マンスリーパンフィクション  01

急激な温度の変化によるものか、レッグウォーマーの下の足がむず痒い。
あーかゆいかゆいと足をくねらせながらミツコは郵便物を運ぶ。


「あーバイト、ついでにこれコピーとっといて」page m-8   マンスリーパンフィクション  01_a0028990_2311652.jpg
売り上げ冊数がうんぬんと書かれた
グラフを睨みながら、
こちらをチラリとも見ずに原稿をよこした。
名前くらい覚えろよ、
副編集長だから頭いーんだろ、
とミツコは毎回思っている。
副編集長に代表される上むき女を
ミツコは苦手としており、
極力近付かないようにしている。
ミツコのささやかな楽しみは
毎朝郵便物を各机に届ける時に、
机で飼われている所持品で飼い主を想像することだ。
あ、柳宗理の鞄だ…
一之瀬さんってこだわってるよなー、
見ため力いれてるし、コヤジ予備軍なのかなー、
いやちゃう、ロハス?
ロハスって自給自足みたいなストイックなイメージで、
結構金かかってんだよな、ぼっちゃんなんかな、このひと、
とミツコは思っている。

「うわ、みっちゃんスパッツだし!」と一之瀬。
「レッグウォーマーでしょ、今日寒いもんねー」と村上。
「あ、でもすっごい痒いんですこの素材」とミツコ。
あはははは、と会話の運びで笑ってみる三人。
「村上さん、この小包机置いときますね」
村上さんの机、いつもきっちりしてんだよな、
シンプルイズビューテホーてかんじ、
すげー、消しゴムまで無印かよ
とミツコは思っている。

小包から取り出したパンをしげしげと眺める村上。
「うわ、思ったより大きいな。これ余りそうだから、食べてもいーよ」
どうも、とつまもうとした左手が原稿を握っていたことに気付き、
ああ、こぴーこぴー、とコピー機へむかう。
村上さん最近張り切ってんなー。
無添加友達と一緒にいると思いきや、あの上昇女と仲いいもんな、
あっち側にとりこまれんのかなー、
お、と、り、よ、せ、パ、ン、とくしゅう…げ、相変わらずちょーマニアック。
ナイススティックが一番うめーよ、
相容れないなーこの会社、やめよっかなー、
とミツコは思っている。
「コピ−10部ここに置いておきまーす」
ミツコは右足踵で左足をさすりながら言う。


〜系だとか〜組だとか、言葉が生まれることによってグループが生まれます。
グループが生まれると、さて自分はどこだろうと探し始めます。
自分では掴みにくい自分をなんとか掴もうと、どこのグループの所属か定めて、
自分の居場所と存在を確認するのかもしれません。
どこの所属か自覚が生まれると、その傾向がより徹底され深まっていき、
本来そうでなかったことも、そうであるかのように思い込みます。
そしてグループ内だけで共有される言語、価値観、身なりを守っていれば安心します。
棲み分けマップの縮図は本屋です。
一方でグループ内の結束が強まるほど、他のグループとの壁は厚くなり、
互いの行き来がなくなります。
そのうち異国に行くよりもよほど、異文化交流、みたくなるのでは?
とワタシは思ったりします。


これが今月号かー、後ろの占い&心理ゲームだけ見よっと、
ヨーロピアン淳子って誰だよ、
えっと天秤座は、上司に注意、やっぱりか、
そんで、AB型は、気力低下、やっぱりか、
③の絵を選んだ人は、飽きっぽい人です、やっぱりか、
マンガ買ってさっさとかーえろー、けっこー美味しいじゃんこのパン、
とミツコは思っている。
(fin)


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今月のパン
「まきのや」@湯布院
by akiha_10 | 2006-01-26 23:21 | monthly
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