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page a-6 エッグパイとLIT  後編

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さて、映画「ロスト イン トランスレーション(みじかくLIT)」の
舞台は、まさにこの見上げるホテル、
パークハイアット東京なのである。

二人の外国人男女が、訪れた東京の雑踏の中を過ごす。
馴染まぬ土地で、浮彫となった人間の空虚感や孤独感が
淡々と描かれます。
そんな二人が出逢い、共感し合い、通じ合う場所が、このハイアット。
ちなみにこの作品、私は偶然にも「ロンドン一人ふらり旅」の帰路の
機内で観たのです。
解放感と興奮に包まれながらも、慣れない土地で、
ぬぐいきれない孤独と共に過ごした数日。
あまりにもタイミングとシチュエーションがぴったりなので、
「そうだよね、そうだよね」と深い感動に浸ったことを覚えています。


監督のソフィアコッポラは、名監督フランシス・フォード・コッポラの娘。
女優、フォトグラファー、デザイナーなど、多岐にわたる活躍ぶりはめざましい。
ただ、いわゆる七光的な環境もあってか、その姿勢には賛否両論、厳しい目もあるよう。
私は、チャレンジャーソフィア、好きです。なにより本人が楽しそうだもの。
LITの、二人がタクシーから眺めた雑然とした渋谷や、ホテルの上階の客室から見下ろす都会の新宿は、
セリフの少ない二人の心理描写のよう。
ちりばめられた絵的なカット、
ここはやはり、フォトグラファーでもあるソフィアならではのセンスではないかな。

印象的なのは、さぞかし素敵なお部屋に連泊しているだろう、ヒロイン、スカーレット・ヨハンソンの切ない表情。空がひろがる大きな窓も、心地よいリネンのシーツや一流のサービス、東京を一望できる空間も、
彼女の心の穴を埋めることはできない。
場所や物それ自体には、ほんとは何もなくって、それを感じる心が全てよ、と教えてくれる。


そんな高層ピルを見上げながらエッグパイを楽しむ私は、(軽く憧れは抱きつつも)
単純なことに、結構幸せなのです。
by akiha_10 | 2004-11-30 20:32 | Art
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