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page d-212            「In the souk」解体新書   10

絶賛発売中!new album「in the souk」ライナーノーツ


10. バイバイ、メランコリー!
作詞&作曲:瓜生明希葉  編曲:中西俊博


わたしの両親は転勤族だったので、結構な数の引越を経験しました。
「どこに居たって、おいしいもの、たのしいもの、おもしろい人に、出逢える!」
という我が家のぼやき。
わたしの、ややボヘミアン的な感覚、
人が大好きだけど、
人にも土地にもさして執着しない一期一会体質は
こうした環境によって地固めされたのかもしれません。


そこで引越上手になると思いきや、
なかなか学習しない、毎回おなじみトラップ、
荷造り時のメランコリーです。

だって過去ゾンビを目覚めさせるアイテムが多いでしょ?
希望に満ちた文集とか、授業中まわした手紙とか、
一番自己愛に満ちていた頃のセバレーションプリントクラブシールとか。


誰に、何に、というのも混じりますが、
大きく占めるのは
過ぎた時間に対する哀愁、
確かに命が進んでいく不思議、
大人(フラット)になりすぎたことによる喪失感。
扉のない四角い部屋で
ぼやっと憂鬱と戯れ。

これから年々、
こういった深みと複雑さを増していくのかと思うと、
長く生きることを誇りに思います。







おうちはまるで、その時々のパートーナーのように、
お別れの時には、
「ありがとうございました!」と玄関で家族揃って挨拶をしていた。

上京してはじめての一人暮らし、
こころ剥き出しで駆けぬけた時代。
引越でマンションを出る時、
初めてひとりで言ったその声が、
そのソロボイスが、
ガランとした部屋にあまりに響いて、
さらに、そこで起こった「いっろいろ」がぶわっと押し寄せ、
降りるエレベーターで久しぶりに泣いた。


独立心はあるのに、
まったく強くないとわかった。
ああ、やっかいやっかい。
by akiha_10 | 2010-05-17 01:47 | Daily thinking
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