<   2011年 12月 ( 9 )   > この月の画像一覧

ニューヨークジャーナル 94

思い出すおすすめブランチ。

a0028990_16111633.jpg

ひとつはNORMAN'S
よく聞いてはいたのですが、ここのエッグベネディクトは本当においしかった。
びっくりするくらいとろける。

ミートパッキングエリアのPastis
オニオングランタスープがとてもおいしい。
なんといっても雰囲気が、パリそのもの。
タイル張りされた床や店内を映し出す、いぶされた額縁にはいった重厚感のある年代ものの鏡。
あまりに素敵すぎてウェイターに尋ねてみると、
オーナーのこだわりでほとんどのパーツを主にフランス、ヨーロッパから持って来ているとのこと。
机や椅子は新しいものを古いもののように加工したものだけどね、と説明してくださいました。

特に見てよ。この洗面台シンクまわりの美しさったら。
誰もいなかったので撮らせていただいたけど半ば不審者。


このオーナーといわれるのがNYで数々の大人気レストランをプロデュースし続けている、
レストランキングといわれるキース・マクナリー。
よくレモンタルトやカヌレを買いにいくソーホーのBalthazarと同じオーナーです。
レストラン兼ベーカリーの「Balthazar」も、ソーホーの真ん中に突如パリ。
内装といい世界観といいなるほどこのセンス、彼がロンドン出身パリ在住歴有り、に所以するものであり、
また映画のセットにいるようなトリップ感は彼自身が映画を学び当初ディレクター志望でNYにやってきたことですべてが繋がる。
映画を創作しなくとも、それに匹敵する数々のストーリーが生まれる場としてパリを「パリ」らしく切り取り、またNYに「NY」しにきた人たちに提供し、結果的には多くのドラマを「監督、演出」していると言えるだろう。このいかにものパリらしさは、彼がニューヨーカーでもなく、生粋のパリジャンでもないからこそできるデフォルメだと思った。本当のパリ出身の方がつくったら、おそらくもうちょっと、くたっとゆるくて汚い。ふふ。

わたしがとにかくレストランが大好きなのは、食べることはもちろん言うまでもなく好きで、だけどそれだけでなく、ほろ酔い気分でレストラン中に浮遊しているそれぞれのドラマに包まれるのが好きだからです。
そしてふっと、今までにあった甘酸っぱいこと、しょっぱいこと、すばらしい出会いをちょっとだけ俯瞰して
「人生って不思議。C'est La Vie !」と突如はっと開ける、生きている実感やその有り難さ、こみ上げる感謝、宇宙の流れの壮大さに気付く瞬間がきもちいい。
若くもないけれど、だからといってどっぷり浸かるほどの渋みもないだろう人生経験年数で
はやくも振り返って耽ってどうするのでしょう、我ながら生意気。
このままゆくと、まさに耽適齢期、ヴィンテージのお年頃になった時には、もう耽ることに関してはエキスパートになっていて、「耽(ふけ)方上手」という本でも執筆していることでしょう。
「老け方上手」ではありませんよ。まあそれはそれで書けたら素敵だから、
その時はせめて「老い方上手」にしよっと。響き的にね。
でもね、いつも今夜が最後の晩餐だという心持ちで耽ると、その美しさに泣けてくるから。
だから美味しいものが好き、ワインが好き、心の通う人との笑いが好き、一人も好き!
by akiha_10 | 2011-12-27 16:20 | NY Journal

page d-272          メリークリスマース!

ロックフェラーのスケートリンクに想いを馳せて。
a0028990_19473397.jpg


帰国し、会いたい人にあって、読みたいものを読んで、観たいものを観て、
日本でしたい10のこと、と残念な邦題にありそうなリストアップに線を引きながら、
期間というものがあると人はどうして
こうもいとおしく時間を取り扱うことができるのだろうと思う。

時にライフラインでもあり感動的なまで有益に働く「情報」ですが、
ほとんどの場合が時間泥棒でもある情報を実を言うならばまったく遮断してしまって、
エンシェントな時間にどっぷりと浸かりたいという衝動に駆られることがあります。
(勝手にすれば、という話なのですが)
しかしながら、あらゆるものから解放されたいと田舎暮らしをするものの、
それすらライフスタイルとして公表せずにはいられない人の顕示欲というか
前向きに言うならば表現欲を目の当たりにすると、
人間って、そして誰よりわたしって、超めんどくさいなと思わずにはいられません。矛盾だらけやねぇ。






a0028990_19514819.jpg

代官山に突如ででんと現れたTSUTAYAに度肝を抜かれました。底力結集。

久々にジェルネイル。
技術の高さは世界に誇れるものだと確信した日本ネイルの精巧さ。
今のところNYで何度かトライしたジェルネイルは大満足とは言えず、
久しぶりにきちっとした仕上がりを指先にまとう。
(在住の日本人ネイリストさんなのにどうしてだろう?
アメリカOKラインの基準がゆるいのか感性の違いなのか、なんなのか。
デザインの問題ではなく、ジェルの乗り方が違う。仕上がりの緊張感が違うんよねぇ。)
そういえば中国から一時帰国した姉のちびまる子カットを見てひとしきり笑ってしまったけれども、
なんと中国の美容師は資格いらずなのだそう!「今日からわたしなります!」の一声で美容師に。
初めてトライした中国の美容院にて、
無免許だけどスキルもやっぱりなかったブラックジャックのハサミづかいに愕然とし、
一目散に家に帰っては自ら修復オペ、あれやこれやとすいたりしてみたものの未だちびまる子の姉。

ずっと気になっていたホテルオークラのフレンチトースト!
世界各国の著名人を「死ぬほど美味い!」と言わせしめた幻メニュー。
朝食時間のみのメニューというハードルはおかげさまの時差でクリア、
うっかり6時に起きてしまった朝に行って参りました。
さすがに死にはしないけど、相当おいしい。ハンペンみたいなビジュアル。





最近友人から新潟の古町糀製造所というところの「神社エール」という飲物を頂きました。
甘酒に生姜が入ったもので、砂糖を加えておらず、お米の甘さだけなのにほんわり美味しい。
とてもあったまります。冷えない女をめざして。
飲物に大量の砂糖が入っていることには嫌悪するくせに、
右手につまんでいるドーナツには大量の砂糖が含まれていますぞ。それはいいんかいっ!


「メリクリ」と周囲でめっきり聴かなくなったのは、
言葉が古くなったのか、さもなくばわたしが古くなったのか。
それではみなさん、素敵なクリスマスを!
by akiha_10 | 2011-12-24 20:27 | Daily thinking

ニューヨークジャーナル 93

a0028990_2351895.jpg

アッパーイーストサイドで小麦サーベイ。
家族で住む人も多いと言われるこの地域では
子どもを学校に送った後、お母様方またはシッターさんたちのお茶べり会スペースとしても活躍している
ベーカリーやカップケーキやさんが点在。80丁目から96丁目あたりは個人的注目の密集地帯。
Corner Cafe & Bakeryには家族みんなに愛されそうなパンがたくさん!!
白抜きされたベンチがとってもかわいい♥

おすすめはチョコカップケーキ。
すべての種類を試してみたけどもアイシングのチョコではなく、
溶かしたチョコのデコレーションにカラフルチョコスプレーでおめかしされたものが一番おいしい!
そしてチョコレートブリオッシュ。ブリオッシュに期待するしっとりさはないのに
なんだかこのパサっと感がおいしくてどうやら大人気。
チョコチップもぎっしり入っているので噛む度にチョコ遭遇頻度高し、
20ブロックウォーキングでは消化燃焼できないくらい食べごたえがあります。(でも食べちゃう)
天気の良い日にパンをぱくつきながら地図を持たずに歩く時間は至福コレクションのひとつ!
ああ、思い出しただけでもしあわせ!

a0028990_22354364.jpg

Yura On Madisonもおいしい。
実はわたしはカップケーキの上にのっているアイシングはあまり好きではないのですが(でも食べちゃう)
こちらのアイシングはねっとり感控えめです。
なによりお店の雰囲気がよく、陽がさんさんと射込むちょっとした食べるスペースで
人の流れを観ながらお茶をしているだけで豊かな気持になれます。
パン+コーヒー+太陽=最強!


素朴パンが欲しい時にはCorrado Bread And Pastry
サンドイッチ、ベストリー、ケーキも安定しておいしい。
大好きなぼそぼそ系パンも充実。

Madison Ave84丁目と85丁目の間には
日本上陸も果たしたベルギー発ベーカリーLe pain Quotidienもありますが、
実はその対面にある大層素朴なベーグル専門店がうまし。Bagleなんとか、というお店。なんて適当な記憶。
そういえばLe pain Quotidienのアッパーイーストサイド密集度は著しいです。
マンハッタン内には20店舗以上あるようですが、そのうち5軒は確認いたしました!!



でもこうしてクルーズしながら改めて思う、
やきそばパンやコーンパンなどのえらくクリエイティブな日本のお惣菜パンはすごい。
NYであれパリであれ、だいたいどこのベーカリーでも同じスタンダードパンが並んでいて、
「え、なにこれ?」というものに出会うことはあまりない。
Zaiyaという日系のパン屋さんにはポテトサンドやたまごサンドがあるのですが
もっと本格的に日本の惣菜パンを提案するお店があっても流行る気がします。いや、かなり自信がある。
だってふわふわしたパン自体をなかなか見ないもの。
濱田屋あたりがNYに出店したらいいのになぁ。むしろNYでパン屋やろうかなぁ。

まだまだ続く、飽くなき探究心、好奇心、ゆけゆけ世界小麦隊長!(おっきくでてみる)。
by akiha_10 | 2011-12-19 23:04 | NY Journal

page d-271          一時帰国

一時的に帰国。
マネージャー、編集長と再会。


a0028990_10414653.jpg















編集長がACCグランプリ受賞記念チョコレートをオーダーで作ってくれました。
Jam &to go!の時のクロワさんステッカーをもとに!
かわいいやないの!むー。食べられない。




日本が寒すぎて早速風邪の雰囲気に。
そうしておうちでタンスの中を開けると全部春夏もの。
至急衣替えして追いつかなくちゃ!
と言いながら、衣替え用プラスチックボックスから直接ちょっとずつ出している無精者。
いつの間にやら年末か。はやいなぁ。


a0028990_1046390.jpg


たかだか数ヶ月離れていただけとはいえ
日本に関して、自分に関して色々と気付くことが面白い。
「新鮮な目」で観察してみよう!
まず、電車のあのふかふかの椅子がすごすぎる。
by akiha_10 | 2011-12-11 09:34 | Daily thinking

ニューヨークジャーナル 92

ソーホーに心わしづかみされた、超かっちょいい店がある。その名もJay Kos
a0028990_12144399.jpg



a0028990_12223067.jpg
そのデザインのすばらしさと色づかいの美しさ、
仕立てのよさや、うっとりとするような
生地の滑らかさに惚れて込んで通っていた、
もはや美術館の粋のお店。(そしてお値段も美術品)。
悲しいかな紳士服専門店なので
試着できる男女兼用はせめて帽子くらい、
それでも観て触れるだけで満足、とってもすばらしいのです。

デザイナーJay Kosもよく店頭にいらっしゃって、
「あなたの審美眼のファンです!!」と
ただただファンになっていた。
彼はホームページにもあるように大の料理好きで、
食材の色や形からインスピレーションを受けるよう。
なるほど彼のお店は朝のマルシェのような鮮やかさがある。



玉虫色や琥珀色をした発色のよいネクタイや、毛足が上品に伸びた中折れハット、
見事な色の組合わせの格子柄のスーツ。
これは偶然にも上質なスーツに一輪の花をさしてハットを被ったご紳士、
Bordwalk Empireのスティーブ・ブシェミのスタイルそのものである。ああ、素敵!!ため息。
以前にも書いたアメリカドラマBordwalkですが、ストーリーを差し置いて(とても面白いのですが)、
わたしの中ではブシェミ紳士スタイルと、
奥様(劇中)のレースやヴィンテージの美しいお召しものに釘付け!


a0028990_12182696.jpg

ともすればコスチューム的なので、
もし日常生活で全身Jay Kosスタイルの
キメキメファッションアディクト男子に遭遇したら
若干演出過多を感じる恐れあり(NYではほぼゲイ)ですが、
イヤミなくさらっと着ていたら素敵すぎる。




わたしのお買物事情はといいますと、カジュアルからハイまでクルーズしつつも
NYではThrift shop と呼ばれるセカンドハンズ(中古)のお店が
とても充実していて、これがすこぶるたのしい。
原宿や下北沢にあるちょっとお洒落な意味合いを持つ「古着屋」ではなく、
リアルに、「古い」着屋があります。
自身の調査では、マンハッタンを出れば出るほど、リアルに「古い」着屋、
ほとんどゴミ直前、でもゴミに出す前に売ってみるか、というお店に遭遇する。
お洒落というより「リサイクル」により重点を置いたお店、そういうお店が楽しい!
そのような本気リサイクルのお店は不要品を出しに行っても買い取りではなく贈与なので、
販売価格もフリマ状態で5ドル〜20ドルの価格帯。
日によっては半額セールの日もあって、セオリーのセーターを3ドルで買ったことも!
そういったちょっと都会を離れたThrift shopでは
到底ファッションには興味がないだろう迫力のあるおばちゃんが
H&MであろうがForeverであろうが、Theoryもvanessabrunoも一緒くたに値段を決める、
メーカーがどこであろうが、平等な「くたびれ具合や汚れ」の基準を採用しているので
たまにびっくりするほどラッキーなものに巡り会うのである!
いつも値札がついたまま直行でクリーニングに出すのですが、その費用のほうが高かったりして。
だがNY古着屋クルーズの極意。経験者語る、壇上で拡声器を持って高らかに叫ぼう、
「ベッドバグにはくれぐれもご用心〜ん〜ん〜ん〜!!」




a0028990_12225850.jpg
そうしてNYをサヴァイヴすべく
賢く楽しくファッション経費削減に努めながらも
帽子だけはどうしても仕分けできにゃい…。
一目惚れした帽子。むー、ほすぃい!
大好きなお店、Legacy。ここのおばちゃんのセレクト、
最高にイケています。
ブルックリンとソーホー二店舗。
NYの帽子デザイナーBrenda Waites Bollingの帽子。 ああ麗しい!!
おばちゃんがデザイナーとお友達でご贔屓に発注できるようで、
美術品価格のところ「似合っているからいいわよ!」と
ちょっとだけレプリカ価格にしていただきました!わーい!



しかし。これもコスチューム的なデザインなので
ともすれば安全第一ヘルメットか取り締まり婦警と紙一重。でしょ。
よくわたしがそうして使う、スッピンカモフラージュとしての帽子の役割はまったく果たさない、
ちゃんとコーディネートしないと被れない、レベルお高し帽。

NYではちょっと気になったりちょっと良いだけで声を掛け合う街なので(それで友達になることも多々!)
嬉しいことに「あなたの帽子アメイジング!」と街中で声を掛けられるかと思えば、
友人に言われた「おお、チャイニーズハット!」に射得てる!と納得しながら
いやいや、そっちやないんよねー。
どちらかと言えばおフランステイストなんやけどな…。とうじうじ。
後日、よく行くパンやさんで「like Coco!!(シャネル)」と呼ばれ、
そうそう、それですよー。それそれ!とニコニコ挽回したり!!
なにかと愉しい物議を醸す帽子である。
a0028990_12275832.jpg




意図はどちらかと言えばこっちの世界観なんやけどなぁ…。








そうそう、とっても嬉しい吉報を頂きました!
音楽制作(作曲、演奏、歌)でお仕事させて頂きました「プラチナリング」のラジオCMが
2011 ACC CM FESTIVAL』 ラジオCM部門の、総務大臣賞グランプリ/音楽賞を受賞しました!
制作に携わったすべての方、おめでとうございます!一員になれて本当に光栄です。
これからも邁進いたします。ありがとうございました!わーい!
by akiha_10 | 2011-12-09 13:04 | NY Journal

ニューヨークジャーナル 91

a0028990_11213171.jpg

NYで話題の念願の「Sleep No More」に潜入してきました。


英国のシアター・カンパニー「Punchdrunk」が主催する
チェルシー地区にあるホテルThe McKittrick Hotelを舞台とした体験型アートショー。
好き嫌いが分かれるという噂を聞いていましたが、個人的には、衝撃的によかった。
シェイクスピア4大悲劇の一つである「マクベス」がテーマになっていて、
マクベスがダンカン王を暗殺したあと、その後彼の良心の呵責を苛まさせることとなる、どこからともなく聴こえる声、"Sleep no more!Macbeth does murther sleep"(眠りはないぞ、マクベスは眠りを殺した!)という本文中からタイトルがつけられている。


取れたチケットが夜11時半からの入場。
30分刻みでまとまった人数がホテル内に入っていく。
このショー、ショーといっても座って鑑賞するのではなく、
六階建ての100近い部屋を歩き回る参加型のショーなのです。


a0028990_11241658.jpg
はじめにマスクとトランプカードを渡される。
赤いクロスのかかった丸テーブルが囲むレトロなステージでは、スパンコールを纏った厚塗りのシャンソン歌手がアンニュイに唄い、1930年代の薄気味悪いくたびれたバーでしばし自分のトランプのナンバーが呼ばれるのを待つ。タキシードを着た中性的な男にナンバーを呼ばれたら観客は皆マスクをつけてそろそろとエレベーターへ。



各階で少しずつ人がおろされていき、各々が思い思いの順路でまわっていく。
1920年から30年あたりのアールデコの家具や小物、
様々な想像を喚起させる人の息づかいが聴こえそうな古びた手紙や走り書き、
誰かが大切に持っていたのだろうくしゃくしゃの写真。
それらすべてに自由に触れることができる。



館内は迷路のように複雑に入り組み、墓場やおびただしい数の小動物の標本や剥製、全面クッションでできた精神病患者用の部屋、バーや探偵事務所などがあり、まるでヒッチコックのサイコな映画の中を彷徨っているような錯覚に陥る。また観客がつけたマスクがその場をさらに異様にさせ、顔を覆って匿名にされた我々は現実での、また現実との関係性を遮断され、口をも覆ってしまっていることが自ずと静寂にさせ、仮面が見事に非現実的な精神的内面にいざなう機能を果たしている。


陰鬱なサウンドが流れる館内を足音を消すように巡っていると突如役者に遭遇し、彼らは台詞なしに苦悩の表情を浮かべ身体表現で誰かと争ったり踊ったり、観客をどこかの部屋へ引きずり込んだりと、マクベスを彷彿とさせる血生臭いシーンが繰り広げられる。それらすべては役者に触れることのできる距離感で行われるのだ。



そうして役者を追いかけていくと、シーンのパズルのピースが少しずつ貯蓄され自分の中でストーリーが構築されていく。現れた役者が三人であれば、その後誰を追いかけるかで次に見るシーンが違うという、人によって異なる、幾通りの組み合わせがあるショーなのである。


館内をアップダウンしながら夢中になって役者を追いかけていると、誰を追いかけていてもそこに辿り着く壮大な晩餐会に導かれる。役者がそこではじめて揃い、おわりらしきシーンを目の当たりにする、のだが、そこからまた役者たちが散らばって演じはじめる、というエンドレスストーリー。


それが一体おわりかはじまりなのかが分からない、このショーの仕組みそれこそが、同ショーがテーマとしている「死と生」のおわりなきループを暗示しているようで、とことん不気味。



はじめのバーに戻って、勧められたアブシンスを飲む。
アブシンスは幻覚作用があるとして1915年から90年代まで違法とされていたお酒。
夜の11時半からはじまり、外に出たころには真夜中の3時。
文字通り「Sleep No More」、はじめ聴いた時に違和感であったシャンソンが耳の中で心地よく響き、
数々のシーンが頭の中で印象的に、絵画のように飾られてゆく。


出口扉を開けて目に入ったぽっかりと浮かんでいたまんまるい満月を
手に取って半分に割って食べられるような気がして、どこからが現*覚なのか、
剥いでもなお見えないマスクがうっすらと張り付いているようで、その境界が曖昧になっていた。




ちなみにわたしが友人にこの話をしていると、「マクベス!あー聞いちゃった!」と言わたのですが、
どうやら「マクベス」という言葉そのものが不吉という都市伝説があるようなのです。
世界中でこれを上演する度に、役者が事故にあったり舞台装置が壊れたり、というハプニングの頻度が多く、
マクベスの内容のスコットランド王が「とり憑かれる」事と掛けて
それを「呪い」と言う人もいるとかいないとか。
もちろん大成功した舞台が大半ですからあくまで都市伝説ですが、
演目を「マクベス」と言わず「The Scottish Play」と呼んだり記すことも多いそう。
スコットランドのケルト文化に見られる魔女や妖精の言い伝えの多さを照らし合わせると、
寝ても覚めても不安定になる呪文にかけられたかのようなこの作品の観後感は思わず納得。




最近音楽を聴き比べていても思うのですが、芝居の「War Horse」も「Sleep No More」もイギリス発、
スケール感やパワー感はUSには敵いませんが、UKはじめヨーッロッパ発の作品の緻密さや深み、濃淡さに歴然とした違いを感じながら、知ってはいたけどやはりヨーロッパが好きだなぁ、ということを再確認するのです。


アメリカ人の友達がよく小洒落た場所を描写する時に「ヨーロピアンテイスト」と言うのですが、
それにはアメリカ人が思うヨーッロッパのインテリジェンスやスノッブさを鼻で笑う若干の皮肉と、
多少の劣等感を感じずにはいられない。
(そうは言っても、基本的にはなんでもナンバワン!と思っている節があるアメリカですが。)
ひたすら愉快なアメリカもそれはそれで好きやけどね。


EUかぶれを再認識したわたしでありますが、だからといってヨーロッパに身を置いてそれを観るのではなく、
ヨーロッパのものをNYで観るという、「Englishman In New York」ならぬ、
さらに関係性を失った無所属の第三の視点、
「Japanesewoman In New York 」の立ち居ちで観察し味わうのが今とても面白い。
by akiha_10 | 2011-12-06 08:14 | NY Journal

ニューヨークジャーナル 90

ローワーイーストサイドで、とても可愛らしいレストランに出会いました!
a0028990_1119217.jpg


ちょっとわかりにくい、メインの通りから入り込んだ場所にあるFreemansRestaurant

隠れ家みたいに奥まっているその建物は一軒家のようになっていて、
ベジタリアンやエコフレンドリーには挑戦的な動物の剥製のディスプレイ、
だがとても素敵なのである。

ホットアーティチョークのディップが美味。



a0028990_11192891.jpg

そして、ああ、パンケーキがあるよ!!
きらりーん!!


季節限定のかぼちゃのパンケーキ!うまし!








NYで話題の体感ショー「Sleep No More」を強く勧めてくれた友人とその感想を分かち合い、
互いに体験した事の報告会でお昼からついエンドレスミモザ。
そういえば、このお店もどこかしら「Sleep No More」の世界観。
by akiha_10 | 2011-12-05 11:25 | NY Journal

ニューヨークジャーナル 89

a0028990_17162837.jpg

















少し前ですが、観たかった念願のストレートプレイの「War Horse」、リンカーンセンターにて鑑賞。
すばらしすぎて、お一人様号泣。

本年度トニー賞最優秀プレイ部門にノミネートされたお芝居。
イギリスの児童書であった作品がロイヤル・ナショナル・シアターが舞台化され、イギリスでは初演2007年、
好評であったため、NYにもやってきました。
舞台は第一次世界大戦下のイギリスはデヴォン、
少年アルバートが子馬の頃から可愛がって育てていた馬のジョーイを父親が軍に売ってしまう。
まだ徴兵年齢に達していない少年アルバートが、取り戻したい一心で志願して戦場に捜しに行くという物語。


ストーリーはフランダース的なよくある人間と動物の愛情ものですが、
これほどまでにシンプルなストーリー、簡素な舞台美術、音楽にあれほど涙させられた事は未だかつてありません。目を見張るのは、なんといっても芝居のメインとなる馬。

南アフリカを拠点に国際的に活動するハンドスプリング・パペット・カンパニーHandspring Puppet Company(本作でトニー賞特別賞を受賞)によって考案された馬は、3人の俳優によって操られます。
(馬の頭に1人、足に2人で操作)。ヘタすればへっぽこな着ぐるみショーになってしまいそうなところ、まるでひとつの命がそこにあるかのような動物の動きを魅せ、瞳や表情を操ることなしに、俯き方や些細な仕草で感情すら手に取るように伝わってくるのが不思議。

そうして最後には、そこに生きている馬に完全に愛着が湧いてしまいます。
鳴き声も音響効果で出すのではなく、馬を操作している俳優が声を出す。
動きのみならず音まで馬そのもので、それらは馬への洞察力と愛情なしには描写しきれないと思う。
馬に入った役者は演じるいうより、一体化しているといったほうが近いような気がする。
また馬全体の形状は革で出来ていて、それを覆うように籐細工のような物で作られていて、
それが美術としてもうっとりするくらい美しいのです。

舞台上に大規模なセットや転換があるわけでもなく、どちらかといえばアナログな演出にも関わらず戦争の描写が驚くほどにリアルで痛々しく、半円状の舞台も手伝ってか観客を生々しい戦火に巻き込み、哀しみと恐怖に追いやる。
時折侘しくテーマとなる唄が男や女によってアコーディオンと共にただ静かに響き、それらは固唾を飲んで入り込んでいた我々を一瞬俯瞰させ、激動の時代とそこに在る愛や命を優しく包みこむのだ。

終始鬱蒼としたモノトーンの照明は、生と死のコントラストをそれぞれの心の目で浮き彫りにさせ、視覚的にはまたそれらは同時に紙一重のところに存在していることを暗示させているようだった。
第一次世界大戦中のフランス、ドイツ、イギリス、アメリカ人の英語のアクセントの違いなども盛り込まれ、本当にこのような感じであったのではないか、と歴史的背景や当時の諸国の文化もにおわせる。


作りものの馬にしろ、デフォルメされた戦争描写にしろ、虚構に対して一度開き直って構築された芸術は心のフィルターを通して壮大な本物の景色を魅せてくれ、舞台でしか観ることのできない生きているライヴを観たような気がします。


このインパクトと感動はパペットの馬によるところが多分にありますが、
来年3月にはスピルバーグ監督による本作品の映画が日本公開されるらしいので、
また違った表現方法で観るのもひとつ楽しみでもあります。
by akiha_10 | 2011-12-03 17:22 | NY Journal

ニューヨークジャーナル 88

a0028990_863623.jpg

感謝祭がおわりすっかりクリスマスムードのNY!歩くだけで楽しい。
特に五番街、マディソンAveから続くアッパーイーストサイドの
ハイブランドのイルミネーションの力の入れ具合は外からうっとりと眺めるだけでも行く価値あり。

今年のバーニーズニューヨークのクリスマスはレディ・ガガフューチャーで、
ガガ様がワークショップを行ったり、
ガガ様デザインのアイテムが手に入ったりと
(デイリーユースではないが!ハロウィン再びになっちゃうからね)ガガ様ジャック。
美術品のような美しいハイメゾンのバッグたちの
目が飛び出るようなプライスカードをめくっては、友人と
「まあ!たったの3000ドルじゃない!」ごっこをしながらひやかすだけひやかして、そそくさと退場。
しかしながら店員のいい意味での放置プレイぶりは、目の保養ショップクルーズするにはとても気楽。

ルブタンのウィンドウもとてもキュート。
レディサンタが頭から煙突につっこんで(若干斬新じゃない…?)
赤いソールをちらつかせながら、バタバタしてます(動いています)。


アッパーイーストウォーキングの時に是非ブレイクで立ち寄りたいのは
前にも紹介したケーキブティック、LADY M
南麻布のケーキやさんPAPER MOONがNYに出店した日本のケーキやさん、
こんな繊細なケーキ(日本では普通なんだけど)は世界のNYといえど、ここでしか食べられない。
バターたっぷりのカップケーキもドーナツもおいしいけど、結局やっぱり一番美味しい、日本のケーキ!
ニューヨーカーにも大人気で、いつ行ってもちょっと待つ。
お洒落さんが多く、いかにもアッパーイーストサイダーズXOXO感溢れるゴージャスな人、
どういうわけかゲイカップルもよく見る。
だってケーキブティックですもの。平坦に笑っちゃう、あははって。
友人が、「で、Mって誰?」って。そこ大事?


仲良くしていただいている音楽家の吉俣良さん
(大河ドラマ「江〜姫たちの戦国〜」や「篤姫」の音楽を書いていらっしゃる巨匠!)
がちょうどNYに来ていらっしゃって、ご連絡を頂きました。
なんと、吉俣さんがNYオフブロードウェイの芝居の音楽を書いて、しかもご本人が演奏されているとのこと!
吉俣さんのお友達であるNY在住の俳優、演出家のJun Kimさん手掛ける
KUTSUKAKE TOKIJIRO
役者もすべてNYでオーディションし、国籍も様々、英語と日本語がまじって上演され、ダンスあり唄ありの、まったくもって観た事のない新しいお芝居でした。ちょっと「キル・ビル」的な。
NYでもその斬新さが各レビューで評価されています。
そして吉俣さんがすぐ目の前で演奏されているという贅沢さ!
何より日本だと「大先生」の吉俣さんが機材を自分で運んだり、
だーれも自分のことを知らない新境地でのびのびととっても楽しんでいらっしゃる姿が素敵でした。



さらにその後びっくりしたのは芝居を手掛けたJunさんがわたしと同じ小倉出身、
しかも同じ最寄りの駅、学区まで一緒の方だったということ!!
これには驚いて、NYのど真ん中で超ローカルなスーパーの話をするのもなかなかオツ。
Junさんの奥様も吉俣さんも鹿児島出身、その場に居た全員が地方出身者で
「なんや、こんなにゅーよーくとか言いながらみんな田舎もんやん!」という話で盛りがったのでした。
by akiha_10 | 2011-12-02 08:17 | NY Journal