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page m-9   マンスリーパンフィクション  02

『正直、業界全体は厳しい状況にあります。a0028990_2165083.jpg
しかし、ライフスタイルが多様化してきた現代にこそ、
わたしたちが掘り下げて伝えることがあると信じて、
誌面づくりに取りかかっています。
でわ、ここで君たちの先輩となる、
入社三年目の企画編集部から、現在の仕事内容について……』





なにをそんなにメモしてるんだろ…。

由加は頬をつねりながら目線だけを左右に動かした。






「ただいま御紹介にあずかりました、企画編集部一之瀬です。えっと、僕がこの業界にはいったのは、やはり雑誌がとても好きだからで、学生の間はありとあらゆる雑誌を読みあさっていました。仕事はやっぱり、これだけは人に負けない、っていう好きなことを生かすべきです!」

いやいや、そのね、なにが、好きかっていうのが分からないんですけど。
そんなのないし。
あー。いつものように質問の手もよく挙がる…
なんか…あたし10歩くらい遅れている…。

由加は、大人数が、同じところで、同じものにむかっている場がこわくて仕方ない。
いつも取り残されるからである。
正直、楽ではない。







「では説明会は一度お昼休みをはさんでディスカッションなので、
1時にグループごとに集まってくださいねー。」

お昼ごはん…あーあれは無理。
あの表面を探る会話は無理。表面的な仲間意識は無理。
連絡先交換してもどうせ用ないしょ。
外の空気が吸いたい。

由加はそうして誰かを嫌うわけでもなく、
無理している自分を自分で見るのが嫌だった。
ほら、取り残されているでしょ、っていうのを再認識するからだ。






あーあー超足痛いよ。
ストッキング、スースーするしさ。
生クリームメロンパン、暖房で生クリームの元気がない…でもおいしっ。
こうやって街を見ると、スーツって案外多いんだな。
そーいや受験の時も、受験生ばっかり目にはいったしな。
そういうもんかな。






由加は電源をいれ、センターに問い合わせる。
なんとなく携帯を眺めるのは、おひとりさまの、定番のつくろいである。

(ゆかちん、きょうのイベント、もち行くよね??
バイト早めにおわったから先に行っとくでし!
きょうは槙ちゃんがまわすらしいぜ^^!)

超行きたい。超逃げたい。
今すぐみっちゃんに、ありえねーって愚痴りたい。
後ろを向けばすぐ、日比谷線の入り口があることも知っている。
一本で恵比寿に行けることも知っている。
あーどーしよどーしよ。













由加はチカチカ赤になろうとする横断歩道をわたった。
ギリギリまだ青。いやもう赤なのか。
黄色のところで、揺れまくる。
12:52、携帯の電源を切る。





後ろ髪をぎゅうぎゅうにひっぱられながらなお、
いまは目の前渡らなきゃ。
(fin)


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今月のパン
成城石井@each place
by akiha_10 | 2006-02-28 10:13 | monthly

page f-5 「クラッシュ」

久々に、深いところにつき刺さる映画を観ました。
「クラッシュ」。




人種差別に対する問題提起というより、
もっと根本。
人の心の、ありのままの姿を、
すこしずつ剥がすように、明かしていく。
なんと、よわくて、臆病で、ズルくて、愚かで、うつくしいことか。
観終わったあとは、ただ受け入れるだけ。
潜水するように、わたしの心のなかにはいっていき、
哀しく光る塊が、ずっしりと居座る。
表にされたLAの社会問題は、
例えば皮膚に現れたデキモノのように、
「衝突」を目に見える形にした一例だと思うのだ。
衝突は常に身近で起こっている。
この映画では、なんでそうなってしまうのか、という
人の心の、ねっこの部分にメスをいれる。


二年前に旅したロス。
ケミィとわたしは飛び乗ったバスの中で、なんとなく縮こまってしまった。
相互に発している、「よそもの感」がクラッシュしていたのだ。
そんな空気のねっこにあるのは、
たぶん反射的に自分で作りだしている恐れであって、
その恐怖は目に見えるわけでもないのに相手に伝わってしまい、
より一層お互いの境界線を強めるモトになるのだ。

始終、自分を問う映画でもありました。
しかし登場人物全員を、なぜにこんなに愛おしく感じてしまうのだろう。
なんど振り返っても、ほんとうに、すばらしい脚本!






立て続けに「ホテルルワンダ」も観ました。
役者ドン・チードルつながりでもあります。
先に観た「クラッシュ」で、問題の中枢に触れていたのもあって、
なんでこうなっちゃうのかな…、
でもこれがひとなんだね…わたしもそうだし…
といろんな考えが巡り巡って、憤りの涙がとまらないのです。


衝突は、単に人の心がつくりだしているだけなのかもしれません。
目に見える形で起こった衝突は、自分と相手の心の衝突であり、
紐解いていけば、それらの大本は、
結局、自分自身の心の中で起こっている衝突なのかもしれません。


film
「クラッシュ」 
「ホテルルワンダ」

よかったらみてみてね。
by akiha_10 | 2006-02-24 01:11 | film

page t-30   into Snow 2

気付けばまた、「お茶」。a0028990_17374438.jpg
今回はカプチーノの旅、といっていいほどカフェイン摂取。
というのも、あたたかい室内を求めて、
あーさむいさむいと避難するようについ、扉をひらいてしまうのです。

そこで味わうカフェの雰囲気、まわりの人の空気、
雪をかぶったモノクロの景色、小走りに去っていくラッシュ、
窓のフレームのむこうの、喧噪。
とかなんだか言っちゃって、
これは悲しき人の優越の幸福だね?と問い、
しかし単純にこうして窓の外を眺める時間が
わたしは好きなのかもしれません。
車窓とかね。乗りもの好きだもんね。
そりゃそうだ、あったかいところから眺めたら、すべてはうつくしい!



チューリッヒの中心地に素敵なお店がありました。
Sprungliのショコラティエと、デリカッセン、ベーカリーが同じ空間にあって、
統一感のある店内は食べ物ブテッィクみたい。
ケースにおさまっているものを見るのは好きなのね、きもちいい。
なんだろこのヘキは?
友人は、本が同じ高さで並んでいるのを見ると、きもちいい
と言ってまわりを若干ひかせていたけど、それと同じだ…
Sprungliはチューリッヒの空港にもあって、
パッケージの雰囲気も素敵だと気になっていました。
大きい駅やデパートにもあったので、
スイスの代表的なチョコ屋さんのようです。
量り売りマカロンにスイスマダムが群がっていたので、
これは甘いもんハンターとしては見てみぬふりはできんよ!、と購入。



このマカロン、特筆すべきは味の豊富さ。a0028990_173881.jpg
だって、選ぶのがまた楽しいでしょ。
シャンパン味、ピスタチオ味がふうみ豊かでした。
そしてどうもチョコも気になって試してみましたが、
これまた美味。さすがスイスチョコ。





こうして甘いもの中心にまわるチューリッヒは日を落とし、
さらに太陽から遠ざかるように、チョコ片手にチェコへ移動。
「うりゅー、チェコ好きだと思うよ」
友人のお勧めを思い出し、フワフワした動機に導かれ、プラハに降り立つ。
あ、さぶさ、ちょっとマシ?と思いながらホテルへ移動する。



着いたとたん、疲労からか安堵からか、
荷物も解かず、ふらふらとベッドに倒れ、
そのまま、なにか魔法にかかったように
深い深い眠りにおちてしまう。
by akiha_10 | 2006-02-23 17:49 | Trunk

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「マイナス5℃」との機内アナウンスに肩をすくめた。a0028990_1942873.jpg
ほとんど気候のことなど考えずに飛び乗ったのはいいが、
そうか、結構北なんだね!とうっかり薄着のわたしは
スーツケースにいれたものを確認をしに、頭を巻き戻す。
飛行機は高度を下げ、雲の割れ目から、
白に埋もれたチューリッヒが顔をだす。
となりの席のデビが窓にはり付いて「pretty!」と連呼していたので、
ほう、これはカワイイと形容されるのね、と親近感を覚えた。
窓の外には雪をかぶった木々と、
ちっちゃい家々がお行儀よく並んでいる。





となりのデビはオーストラリアの女性で、旅の途中であった。
日本を経由して、ヨーロッパ各地を旅してまわるらしい。
はじめて見た日本はそりゃもう楽しかったようで、
「エキサイティング」、と「クレイジー」を多用しながら写真を見せてくれた。
フレームにおさまるとまた新鮮、斬新。原宿と秋葉原の街並と人々。
これはたしかにエキサイティング、と思った。
なにかと刺激の多いこの二つの街が「日本」として強く残ったようで、
デビが帰国して友達に「これが日本よ!」と興奮して紹介することを想像する。
ある一つの事柄は、誰からどう伝えられるかによって、
相手の頭に残るものもまったく違うものになると思うのだ。
口承は、伝言ゲームや噂のようにいい加減かもしれない。
でも語り手のせびれおびれ付で、次の人にとっての「事実」になるのもまた、ドラマチック。
ということは、単なる情報は人を経由すればするほど「物語」になるのかも?
そういえば、友達の友達のお兄ちゃんの友達、の話はすっごいドラマチックだものね。


はなしを、もどして。
たとえば金太郎飴のように、どこを切っても日本、
といえるような場所も時間はなくって(住んでいる自分さえ掴んでない)
物事を把握するとき、どんな切り口でもどんな視点でながめても、
どうしても偏ってしまうことを再確認するのです。
客観、平等に見ることがどれだけ難しいことか。
しかし今、べつになにを分かろうもしないで、
とりあえず今、なに着れば寒くないかを考えたほうがいくない?
と、われに戻ってチューリッヒ到着。


今回の旅は往復航空券をとって、間はベルリンを中心に自由移動、の試みです。
せっかくなので、経由地チューリッヒでストップオーバー。
お昼過ぎにホテル到着。眠くなかったので、中心地に行こうと思う。
洋服を中にしっかり仕込んで、だるまは受付で地図をもらいます。
一歩、二歩、と外に出た瞬間そのまま後退しようかと思うくらい、
し、しばれるよ…。


a0028990_195344100.jpg早足で最寄り駅にむかうが、
25分おきのダイヤ(そして、今さっき去った雰囲気)にあらら、と思う。
じっとしていると、より恒温動物の底力を感じる。
へんなステップを踏んで、それを助ける。
そうしてやっと中心地に着いたのはいいが、
駅前の「OLIVE BAR」でカフェラテを飲んで、そのままひきかえす。
だってさぶいよ…。
列車にも乗れたし、スイスラテも飲めたし、ああもうわたし充分よ、
とあっさり退散。





「起こったことが冒険」
そんな心意気でいると、この旅に失敗も成功もないのです。
路線間違がえようが、道で滑ろうが。
雪はふりつづく。
by akiha_10 | 2006-02-20 20:01 | Trunk

page a-11  そしてまた左上へ


去年と今年は「日本におけるドイツ年」ということで、
振り返ってみると、ヒトラーに関する映画や芝居の感想をまわりでよく耳にしたような気がします。
今年はワールドカップもあるもんねぇ。
そんな流れでドイツに意識がむかっているところ、
思い出すのはベルリンを舞台にした映画「グッバイ、レ−ニン!」です。
ドイツというと、洗練されたモダンデザイン、無駄のない機能美、のビジュアルイメージがあります。
乗り継ぎで西ドイツに立ち寄った時、なんとなく想像通り、
日本との共通する緻密な計画によるプロダクツ、
スーパー袋は当然持参!のクリーン&エコロジーが印象的に残りました。


「グッバイ、レーニン!」に出てくる懐かしい可愛さのインテリアや都市デザインは、
その時受けた印象、思い込んでいる「ドイツイメージ」とは違う。
壁紙とかもポップでちょっと装飾過多。
言うならば、ジェニーハウスではなく、リカちゃんハウス、といったちょっぴり垢抜けない可愛さがあるの。
(だからといってジェニーがモダンかといえば、疑問だけど…)
モダニズムじゃない…こりゃレトロだね。
単に時代の問題なのか、この思い込みとのギャップは一体なんだろう、
と興味は掻き立てられるのです。



それもそのはず、ベルリンの壁がデザインをも分断していたよう。
かつてベルリンを分断していた東西の政策の違いが、文化芸術にも大きく影響を与えていたようです。
当時社会主義政権の東ベルリンでは前衛芸術は否定すべきものと見なされいて、
伝統的な建築様式やデザインを推奨することで意識の保守化をめざしたよう。
一方西ではそれに対抗するように自由主義の都市計画が進められ、
より開放的でモダンな建築も実験的に取り入れられる。
と本に書いてある。
保守と革新の政策が、それぞれの文化芸術にも反映されているということでしょうか。
(「ベルリン 都市は変化する」参考)
「グッバイ、レーニン!」に出てくる東ベルリンのリカちゃん系ハウス、
そして崩壊後に西から入って来るなんだかハイカラ?な文化にたじろぐ映像は、もう一度見るとなるほどです。
とても好きな映画です。よかったら観てみてね。


こうして、文化は社会背景や歴史とクロスしていて、a0028990_2143717.jpg
芸術はその中を生きる人の心情や
歪みから生まれるものなのかと思うのです。
3ウロコくらい出たよ。
さらに気になって「東京ベルリンーベルリン東京展」に行きました。
アートの足跡と、
まだ歴史の浅い統一後のベルリンの今をすこし感じて来ました。
さらに5ウロコ。
ドイツデザイン展も同時に鑑賞できて見ごたえあリます、おすすめよ。



でもね「百聞は一見にしかず」なのよ…。マサカ?
そう、モアウロコを求めて、ベルリンから中欧を観てこようと思います。
え。マタ、タビ?
時間と周りの理解に感謝です。
中旬に旅の報告ができたらいいね、いってくるね。


film「グッバイ、レーニン」
museum「東京ベルリン ベルリン東京展」
by akiha_10 | 2006-02-02 00:40 | Art