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page t-48    スジャータアイス

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先週東北に行きました。
両親の旅に、姉とわたしも便乗させてもらって、
ひさびさに一家で旅行。
わたしの旅好きは、
旅好きなこの両親の影響も受けているのでしょう。
蛙の親は蛙なのです(当然)。


東北新幹線に乗車するやいなや、
「スジャータアイス!」
と姉とひっそりはもらせた。
スジャータアイス。
それは新幹線のワゴンで運ばれてくる
おきまりの美味なるアイス。
それだけではない。
なんといっても瓜生姉妹ハートフルメモリーの
キーアイテムでもあるのだ。



















あきは小1、姉小4の夏休み、
はじめて小さい姉妹ふたりで東京から福岡に行った。
両祖父母に会いに、
親がふたりきりの冒険に出してくれた。
なにもかもがドキドキで、
親からもらった旅行費用がはいった封筒(当時にしたら、超大金)を
何度も何度も、
ポシェットにちゃんとあるか姉と確認していた気がする。
お金、よーし、きっぷ、よーし、お菓子、よーし。
車掌さんが乗車券を確認しにくるにもドキドキ、
小倉駅前でスピードがおちるときから、すでにドキドキ、
おり遅れたらどーしよ…と、はやめのスタンバイ、
とにかくドキドキ。
ちゃんと忘れ物なく、下車できたときには、
わたしたち、おとななのよ…ふふん、
と得意顔になった。
駅には祖父母が迎えに来てくれていて、
その顔をみると肩の力がいっきにぬけたものだ。





10日くらい過ごしたのだろうか、
ぜんぶが冒険だった。
親がいないから心置きなく、
祖父母に甘え放題。
夜遅く起きててよくって、
普段買ってもらえないものを買ってもらって、
特例ばかりのスペシャル三昧。
たのしくってたのしくって、
いっぱい遊んでもらって、
おじいちゃんおばあちゃんと思いでもいっぱいできた。
だから、
帰らなきゃならない、その日、
いつも笑い転げているわたしたちは、朝から静かだった。
ふたりとも、同じ顔をしていた。
…帰りたくない…





博多駅に送ってもらっているバスの中でも、
ふたりはふくれていた。
おばあちゃんが「そんなにむーっとせんでもいいやないね、どうしたんね」
と声を掛けてくれるけども、ふたりは黙っていた。
姉もわたしも、じっと黙っていたけれど同じ気持だった。
ずっとこの旅のことを
すっごいすっごいたのしみにしてて、
すっごくうれしくって、
すっごくたのしくって、
それがもう終わってしまう。
またおじいちゃんおばあちゃんとも遠くなる、
もうしばらく会えない、、、。
輪投げゲームをしたこと、
たけのこ掘ったこと、
おじいちゃんが寝るときつけるラジオ、
お線香のにおい、
こわい日本人形、
押し寄せる思いでと想いは、
とてもじゃないけど抱えきれなくって、
なにか言ったらその拍子に涙が溢れてくることを、
ふたりともしってた。
「泣かんでよ」
暗黙の約束事をふたりはまもった。





「またきんしゃいね」
祖父母がホームで見送るときも、
相変わらずむすっとしたまま新幹線に乗車した。
座席に座って窓越しに、
おしとやかに手を振ったりしていたけども、
ドアがしまるアナウンスが流れたときには、
おねえちゃんがついに泣きだして、
それを見たら、
わたしもいっきにやぶけた。
新幹線がゆっくりと動きだすと、
もう、わんわん泣いた。
それはもう、永遠の別れかのように、
まさに、見えなくなるまで、
窓にはりついて祖父母に手を振った。
もう会えんのや…
もうおわりや…
さよなら…








ちいさい二人がしばらくひくひく泣いているものだから、
前に乗車していた4人家族が何ごとかとびっくりしながら、
気にかけてくださっていた。
ちょうどその家族に同年代の子がいて、
わたしたちもしばらく乗っているからと、
奥さんが様子をうかがってくれていた。
これ食べなね、
と買ってくださったのが、スジャータアイス。
呼吸がひくひくしている中、
喉を通ったアイスは、
興奮をおさえるようにつめたかった。
涙でいろんな成分が出ていってしまったものだから、
甘いアイスはより甘かった。
眼を真っ赤にして、
もくもくと食べた、
スジャータアイス。
あれだけ朝から溜めこんで、
緊張して、
泣き疲れて、
世界の終わりかのように絶望的になった末、
ふっと解けた安堵感。
ふふ…おいしいね、
と食べる自分たちに、
くくっ、と笑った。


あのときの奥さん、ありがとうございました。
































「すみません、アイスください」
ワゴンで運んできたぶんはもうないと言われ、
ショック。
持って来てくれるというので
スジャータ待ちをします。
その従業員が、おじさんでもおにいさんでもないので、
そのお方を「おにさん(おじさんのイントネーションデ。)」と名付けた。
おにさん遅いね〜
おにさん、忘れとるよ。
と姉とおにさんの再来を心待ちにした。
おにさん、おにさん、おにさん?
ちょっと言い方を変えるだけで5分笑えた。
おにさんが再び姿を現し、
この手にやっとのスジャータアイス。
ふっとあの時の気持がよみがえって、
胸の奥がちぢこまる。



今また、ふたり、アイスを食べて
くくっと笑う。
「おにさんって…」






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by akiha_10 | 2006-11-12 22:38 | Trunk
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