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page t-46   Tool Mouth 7

ふっと冷たい風にちぢこまり、
おもいでに捕われる初秋。
あの夏が、わすれられない…
まさか、いまだイタリアなんて話していることに、
おゆるしを。
いつも心にヨーロッパ。
ここへんで、最後、思い出してこね。





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そうそう、わたしとケミィはイタリアの海岸沿い、
サンタマルゲリータリグレにいるところでした。
地図のない土地、情報薄の土地が
動物的感覚を呼び覚まし、
嗅覚にいたってはセンサーの感度がだいぶ優秀になっている。





お腹がすいた。
こんな時おいしい本のひとつでも持っていると、
せっかくだからと調べてしまい(それは当たることも、裏切られることも)、
点と点だけに気がいって、道すがら過程に集中できない。
ここでは直観こそ頼り。
過程の中に、目的あり。
海岸沿いに並ぶリストランテを横目で
観察しながら、鼻をきかして。
どこがよさげ??ととりあえず歩いてみた。
直観とかいってしまったけれども、
結局は雰囲気やお客さんの入りや、食べているものなど、
目に見える「事実」がかなりポイントを稼いでいて、
実際たいしたことはないんだけどもね。
あはは。






一番魅力的に映ったリストランテは
温室のようにガラスで囲んだpage  t-46    Tool   Mouth   7_a0028990_114845.jpgテラスが印象的。
家族同士、恋人同士、友人同士、
バカンス地にゆるされた、
リラックスという贅沢をまとって絶えずお喋り。
満席だったテラス席にちょうど空席がでて、
どことなく縁あるような気がしてくる。
結果もついてきた。
直観の導きは、見事美味しいど真ん中を射たのです。
実は、ここのが、今回の旅の中で
一番美味しかった!
カルボナーラが絶品なのよ。
運ばれてきたパルメザンチーズも、
たっぷりのせて、
モチモチのパスタに絡む濃厚な味に酔いしれました。
カルボナーラはもったりとした印象がありますが、
パスタにほどよく芯とコシが残っていれば、
口の中で粘土にならんくっていいね。
忘れられないです。
ありがとう食のかみさま、
ごちそうさまでした。










スタッフの方も優しくて、page  t-46    Tool   Mouth   7_a0028990_1293841.jpg
いろいろと気づかってくださいました。
のんでみ?と、食後にはリモンチェッロを。
30度以上のリキュールに、
うえっとなるけど、
レモン皮の香りがつんときもちくて、
子ども風邪くすりみたいな甘さが懐かしくて、
もうひとくち、もうひとくち、
と唇を濡らすまに、
あけてしまったのよ!





気持よく酔って上機嫌になると
感動しやすくなるわたし、
最後まで丁寧なホスピタリティに胸を打たれ、
チップ多くおいちゃおう、おほほほ
と心からそう思うマダムな経験をした。
チップの意味は、こういうことかと、
今さらだけども、しっくりときた。
ありがとうございました。
















顔を赤らめてロマンチックな海岸沿いを
よれよれとスキップして、
ああ、本当に生きててよかったよ、と即興のうたを唄う。
生きる実感の収集、
これがわたしの生涯かけての趣味であり、
ここに居る意味かもしれません。
人生を俯瞰するにはあまりにも早過ぎるのだけど、
水面にうつって倍になったオレンジのライトと
賑やかな笑い声、
満腹な胃袋と、
みんなのおんなじひとつの月、
そういうの全部、
なにが欠けても、なにが足されてもならん、
今このベストな状況が、
こんな気持にさせてしまうのだった。











夜が明けたらミラノに出発よ。
by akiha_10 | 2006-09-15 01:38 | Trunk
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