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うんしょ。
ケミィに下を支えてもらいながらスーツケースを引きずりあげる。
狭い列車入口で高さのある階段を荷物とともに登るのは
なかなかの力仕事である。
この荷物さえ身軽になれば、もっともっと行動範囲が広がると思うのだけど。
口に合わなかったら心配よ、
とフリーズドライのお米やら味噌汁やらをたんまり詰め込むケミィ。
なんだかんだで帰りには、空であった片面のケースも
モノで埋まってしまうわたし。
女の子やしね、ガサガサはいやよ、
と硬水対策に保湿液だとかトリートメントだとか、
普段より気合がの入った用心深さでパッキング。
どうにも荷物は膨らむ一方。
いつかは…、と憧れるバックパッカーの夢はだいぶ遠い。
バックパッカーとは、
最低限の荷物で持たざる旅人、まさにその日を生きる、
ストイックで崇高なイメージなのである。




欲にまみれた、いやらしい御荷物の置場を確保したところで、
ふぅーっと座席についた。
予想通りに列車は遅れるようよ。
そう、ここはイタリア。
こちらものんびり構える。
イタリアの時間ののんびり具合は、
ヨーロッパ随一の印象にあるが、
そんな気質も嫌いではなかったりする。
なるようになる、なるようにしかならない。
持ちつ持たれつ、他人も尊重、自分も尊重。
とても自己中心的に聞こえるけれども、
みんながこうして生きていると、
誰かのせいにしたりすることが極力少ない。
自由と甘えもある代わりに、自己責任がある。
たとえば極端に組織や仕組みを信頼しすぎて、当たり前だと思ってしまうと、
まさかの場合の受け入れ下手になる。
必ず時刻どおりに動くと思い込んだり、
必ずシステムその通りに動くものだと思い込んだり、
とにかく極端に思い込むと、許せないことも多くなる。
絶対ないなんて、ありえない。
システマティックに人も社会も動くほど、またそれに頼るほど、
予定不調和や矛盾を受け入れなくなる。
日々、風向きは変わる、地球もまわる、自然も人も生まれては朽ちていく。
単調、不変なものなど、どこにもないのに。









だからこそ、できる限りでは、
自分が立っている時間を生きたいな、と思うのです。
ローマでひやかしに入ったハイブランドのブティックでさえ、
お客を追い出し、スタッフはランチタイム。
そして、なかなか開けない。
なんと潔い自分主役のお国柄。
競争も売上げも、ある一面からみるととってもとっても重要だけども、
またある一面からみると、
ランチタイムのオシャベリもひとつの重要な価値観。
たとえ一見消極的な環境でさえも、先回りして、
自分がそこに生きているようにしたい。
そうしないと、もったいない。
人生きっと短いもんね。
わたし、ほんとに時間に貪欲ね(本音をいえば楽しいことにとても貪欲!)
と改めて思うのです。






さっきから、ちょうど斜め前に座っている女の子と目が合っています。
東洋人が珍しいのかな、
にんまりしたら、はにかみながら、にんまりしてくれました。
お互いに照れちゃうね。
家族とトランプをはじめて間中、
頻繁にチラチラ目が合うので、
ヒミツのにんまりコンタクトはしばらく続く。
言葉がお互いにわからなくても、
微笑みあうだけで、なんか優しい空気が流れるね。
記念に写真を撮ってもいい?と聞くと、女の子はこっくりと頷きました。
自然にしててね、と言ってみましたが、逆に緊張の面持ち。
わかる、無意識を意識、ってできないもんね。
それはどうやっても、意識だもの。







列車の30分遅刻により、
悪びれのジュースがもらえるらしいとの情報を得る。
ジュース配給場所は9両も前の、食堂車らしい。
しばしめんどいマンと取っ組み合い、
しかしこの汗ばむ気候、冷たいの飲みたいよ!と立ち上がってみました。
で、進んでみたものの、すみませんすみませんと、
人を掻き分けて行くのは結構大変なのです(通路にも人が座っているものだから!)。
なんだか気分が負けて、2両目でひきもどった。
未収得の様子に、ケミィは戦いに敗れた者を見るかのように見る。
つめたい。
そこで、5分停車する大きい駅でホームをダッシュしようかなどと作戦をたてたけれども、
ジュース一本でうっかり乗り遅れる
マヌケかつ爆笑な事態(やりかねないので)を想定して、やめといた。






いーもん…お水、持ってるもんね。
朝から持参していたペットボトルを
ごそごそバッグから取り出す。
むむむ…思っていたよりかは、、、、
ぬるいではないか!
これは、
真夏の車に置きっぱなしのペットボトル…
あの、もやっとした車内のにおい…




回想にもうちょっとで蝉の声が登場するところ。
ひらけたのは、フィレンツェの景色。
トランプ疲れでオヤスミ中の女の子を起こさぬよう、
そっとその場を離れる。
ケミィ、まずは、冷水飲もーや。

灼熱のイタリア、列車で北上する。






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ありついた水。
ひやいっ!
by akiha_10 | 2006-07-26 16:58 | Trunk
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