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ニューヨークジャーナル 165

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NYでどうしても行きたかったイベントのひとつ、The Jazz Age Lawn Party。20'sのファッションに身を包んで、禁酒法時代/ジャズエイジを再現してピクニックをしよう!というコンセプト。マンハッタンの南端から出ているフェリーで10分ほど揺られて辿り着く、ガバナーズアイランドで開催される。ガバナーズアイランドは夏季限定でオープンしている島で、とてもNYとは思えないほどの芝生と木々に溢れ、島全体が公園のようになっている。ゆったりとした気分を味わえ、ピクニックには絶好の場所。




今年9年目をむかえる当イベント。頻繁に覗くヴィンテージ店のおばさまに「あなた絶対好きだから」とこのイベントを教えてもらったのが2年前。なかなかタイミングが合わず、今年は春からHPをチェックして日程発表を今か今かと待っていた。毎年7月と8月のどこかしらの週末の4日間開催される。毎年このイベントの前には、ヴィンテージショップが少し賑やかになるらしく、店に入ると「20'sを探しているんでしょ?」と言われたのににやっとした。


実は驚いたことに、先日カフェで会ってひょんなことから話が弾んだジャックリーヌとそのパートナーが、なんとこのイベントの主催者グループの一員だった。「わたし、そのイベントのビッグファンで行ったのよ!」と言うと色々と話を聞かせてくれたのだ。素敵な事もたくさん、そうでない事もたくさんあるNY生活で「居る甲斐があるな」とすべてを帳消しにしてくれるNYマジックがたまに起こる、こういったミラクルな出会いは(狭い)NYでしかないと思う。このイベントはジャズ・エイジのオーケストラ率いるMichael Arenella氏が数人の友達とファン、50人ほどで始めたもの。それが年々話題となり、今や何千人と集るチケットはソールドアウト、20'sフリークなら知らない人はいないほどのビッグイベントになっている。ガバナーズアイランドの利用規則が厳しく、人数を限ることや、音楽を出していい時間、セットを持ち込めるのが一日前しか許されないなど、調整がテンテコマイだとジャックリーヌが話していて、まるで舞台制作のようだと思った。

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マンハッタンからガバナーズアイランド行きのフェリーに乗った瞬間、すでに20's!20's!20's!フリンジ、レース、パール、クロシェ、パラソル!右も左もフォトジェニック。気合いの入ったピクニックセット(机や椅子)を持参されている方、バスケットや食器までアンティークで揃えている強者など、映画のセットのよう。お互いのスタイルを撮影しあったりして、これはドレスコードは違えどコスプレイベンドだなぁ、などと思ったりもした。本来はもっとのんびりと音楽やダンス、お酒を楽しむ「ピクニック」が目的だったのだろうが、今は規模が大きくなり過ぎて参加型のショーと言ったほうがよさそうだ。


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NYにおける20'sブームというのは、10年前くらいからジワジワとはじまったようだ。わたしがNYに積極的に行ったり来たりし始めた3年前、「Speakeasy/スピークイージー(もぐり酒場のこと)」スタイルのバー、つまり禁酒法時代に違法で経営していた、という設定の看板のないバー、日本で言うところの「隠れ家系」バーのトレンドが既に台頭していた。アパートの一室の部屋のインターンホーンを鳴らして入ったり、ホットドッグ屋店内にある公衆電話の中にある扉から入ったりと、演出も様々。古めかしい内装(お洒落な内装が多い)、薄暗い空間にミクソロジストと言われる、ハーブやフルーツをふんだんに使用して個性的なカクテルを調合するバーテンダーがおり、「カクテルも奥深いなぁ」と味の探究心を満たしてくれ、トリップ感を提供する空間が「Speakeasy」と呼ばれるバーに期待できることだ。


かつて住んでいたローワーイーストサイドにあったMILK&HONEYはタイムトリップしたような情緒があり、一番印象的なバーであった。メニューはなく、好みの味や気分をミクソロジストに伝えて作ってもらうということが、飲物を飲むというバー以上のエンターテイメントであった。そして必ずハズレないカクテルが出てくるので、一緒に行った友人は皆その後ファンになった。人気になって事業拡大、フラットアイロンに移った新店舗に行って少しがっかり。基地のように狭く、やや汚なめな、薄暗い、危険な香りのする空間がよかったのだが、高い天井と、古く見せかけた真新しい什器に興冷めしたのだった。ここ数年で「Speakeasy」とうたうバーはもの凄い数で増え続け、実際に行ってみるとMILK&HONEYの新店舗同様、古く見せかけたハリボテ感漂う空間が多く肝心な親密感、秘密感、場末感、背徳感がゼロ。友人がDisneyfication(ディズニフィケーション)という造語を教えてくれたが、ディズニーランドのごとく、それっぽい時代や空間を演出すること、それでいて本来その時代や場所にあった危なさや汚さなどのネガティヴな面は排除して、エンターテイメントとしてクリーンで安全な環境を創り出すことらしい。そこにカルチャーや歴史が生まれる様子はなさそうなクリーンさの事だ。最近のSpeakeasyは大手資本の力を感じる、まさにディズニフィケーションされたものばかり。Speakeasyとは本来アンダーグラウンドに隠れていてこそ機能するのに、こうにも公に何軒もSpeakeasyが出来始めると、段々と”Speakeasy”というスタイルも響きも時代遅れのように聞こえてくるから不思議だ。頂点を極めたトレンディな文化は、言葉と共に往々にしてこういった運命を辿るものだ。





20'sブームはここ数年の話題のエンターテイメントにも現れていた。未だ人気の体感型ショー「Sleep No More」の演出や時代設定もそうだ。わたしはこのショーが行われる架空の幽霊ホテルのラウンジではじめてアブシンス(幻覚や錯乱状態を起こす、という噂で昔は厳しく禁酒されていたお酒)を使ったカクテルを飲んだが、Speakeasyでアブシンスは、禁酒法時代の代名詞的お酒として取り扱われており、多くのバーでよくフィーチャーされていることに気付いた。「Sleep No More」の少しアンダーグラウンド版、ローワーイーストサイドで行われたショー「SPEAKEASY DOLLHOUSE」では、もぐりの酒場で急に取締が入って来ても取り膳えるよう、当時ティーカップでお酒を飲んでいた事を、そのまま再現していたのも面白かった。このショーがあった会場は、The Backroom Barという名前で普段もSpeakeasyのバーとして営業している。



20年代の狂乱を再現するかのようなバーレスク(芝居+コメディ+ダンス+ストリップのショー)もNYで人気だ。バーレスクといえば、ローワーイーストサイドにある「THE BOX」はバーレスクの極み(いろんな意味で)だと聞いた。一度機会があるなら入ってみたいと思いながら、予約する際にはツテでもない限、4-5人が集えるテーブルサービスを2000ドル(約20万)以上で買わなければいけないとか。NYらしい、豪遊できる大人のためのエンターテイメント。噂によると、その内容もクレイジーらしく、通常のバーレスクより内装やアクロバット、ダンスなどの華やかさがスケールアップするだけでなく、セクシーを越えた「見たいような見たくないような」ネタもエスカレートすると聞いた。ノーマルの刺激では物足りない大人達向けに、笑える「滑稽」のその先、「アブノーマル」の域にやや足を踏み入れるのだろうと推測する。今年春先に行った「Queen of the Night」もバーレスクを織り込んだショーで、Speakeasyを思わせる妖しさ、演出が衝撃的だった。NYでしか観られないものとして、今一番おすすめするショー。


また、2010年に始まったマーティン・スコセッシ製作のテレビドラマ「Boardwalk Empire」や昨年の映画「華麗なるギャツビー」なども手伝って20'sブームは頂点を迎えたような気がする。ちなみに、このピクニックイベントに「Boardwalk Empire」の協賛がついたそうだ。以前も書いたことがあるが、「Boardwalk Empire」の20's衣装クオリティ(すべてのクオリティが高いが)は一見の価値がある。女性達が着用している服も可愛らしく、ヴィンテージレースなどをふんだんに使っており(それがレプリカだったとしてもすごい)、マフィア達のカスタムメイドと言わんばかりのジャストサイズのスーツの生地やしつらえは、観ているだけで豊かな気分にしてくれる。それが例えマフィアドラマよろしく血飛沫にまみれた残忍なシーンでも、わたしは血に染まったネクタイにうっとりとしている。小さな仲間達からはじまったイベントが、今や大手テレビ局がスポンサー。「エキサイティングでしょ!」とジャックリーヌは肩をすくめて微笑んだ。




ビッグバンドとダンスフロア。ダンス!ダンス!ダンス!この時代一世を風靡したダンス、チャールストン。
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a0028990_00380930.jpgそれを眺めるカメラマンやブロガー。












家族でジャズエイジ!
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この時代、日傘がファッションとして特に流行したようで、販売もされていた。私たちからすると、日本がオリジナルではないかと思うような和紙製の傘もたくさん!わたしが持つと、ジャズエイジというか、なんというか、がんばっても大正ロマン。






by akiha_10 | 2014-08-19 23:08 | NY Journal
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