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ニューヨークジャーナル 120

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ローワーマンハッタンからフェリーで25分くらい、ステタン・アイランドに到着します。そこに建つモニュメント、9.11の同時多発テロのスタテン・アイランドの犠牲者を悼む記念碑は友人の友達の建築家さん、曽野正之さんが建築されたのだそうです。

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国際コンペで選ばれた正さんの作品「ポストカード」は、遠くから見ると白い羽のように見えます。葉書を267倍に拡大した「世界一大きなツイン・ポストカード」に、切手とみたてた267人の被害者の名前と横顔が記念碑に刻まれています。


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この左右の羽のような間に
入って行くと、
ひとりひとりのお顔とお名前。







このお顔の形は正さんがひとりひとりの犠牲者の方の正面の写真から起こし、遺族の方にお話を伺いながら制作したものだそうです。このような一人一人に対しての気配りやその作業の細かさは日本人ならではだと思います。セレモニーでは名前が読み上げられ、ブルームバーグ市長はじめスピーチが行われた後それぞれのお顔の場所に献花されていきました。


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NYにいると時折9.11の話題が持ち上がり、当時ニューヨークにいらっしゃった方からお話を聞く機会があります。印象的だったのは、事件からその数ヶ月の間、ユニオンスクエアなどの公園広場に人が集まって、肌や心の触れ合いを求めるかのようにロウソクを灯して肩を組んで唄を唄ったり、という風景があちらこちらで見られたということ。そしてその数ヶ月間は、圧倒的に犯罪率が減少したとのこと。

それを考えると、喧嘩の発端、犯罪の発端、事件の発端、戦争の発端は、国と国ということではなく、人と人、人の心と心にあるのですね。ショッキングな国際的テロを目の当たりにして人の温もりや優しさ命の大切さを知り、争いや犯罪の非生産性や愚かさや哀しさを学べるのであれば、普段何気ない一日の、宇宙が成り立つ奇跡的バランスや人間が生かされているメカニズム、その圧倒的な奇跡に着目して、人間同士の暴力や争いが宇宙規模から見るといかにちっさいことかと、いつも実感し続けることだって可能ではないだろうかと思うのです。哀しいことに、人は失って学ぶことのほうが多いのですね。


NYにいると◯◯人という感覚はボーダレスだと感じることも多いのですが、また逆に同じくらい自分のナショナリズムを問われる場面も多くあります。つまり、日本にいると日本人であることをまったく意識しないので、そのままずっと意識しない。NYでは、皆ボーダレスに平等で無差別でいようと意識が働いている、「意識する」ということはそこに常に違いがあることを認めているのです。こうして「日本としてはどうなんだ」と意見を求められる時、果たして自分が正しい知識を持っているのか、社会に関心があったか、と自分のあまりの無知さに不甲斐なく思うことが多々あります。


海外を飛び回る方がよく「ヨーロッパにいるといろんなニュースが入ってくるが、アメリカにいると、ほぼアメリカのニュースしかやっていない」というように、これだけ情報で溢れていながら、自分が意識的でなければ、正しくフラットな情報を入手するのは困難のようです。アメリカ人が自ら「アメリカではほとんど世界史を学ばない(自国アメリカ史ばかり)」と皮肉まじりに言っていた。NYの街中どこでも、田舎に行くと特に家には必ず星条旗が掲げてあるように、アメリカ人は自由でナンバーワンな自国を誇りに思い、自国が大好きなんだと感じる。わたしもNYに思入れも芽生え、楽しい事に全力投球なアメリカ人も好き。でも時に話していて、敵が現れたらやっつけようという、勧善懲悪のヒーローもののような単純すぎる思考回路にはちょっとだけぞっとすることもある。暴力を好めばそれを、平和を好めば平和を引き寄せるものだと思う。セレモニーでは犠牲になられた方々に謹んで哀悼の意を表すと共に、アメリカに限らず世界中の人ひとりひとりの心が少しでも穏やかに微笑むことを祈った。

わたしは偉そうに世界を語れる分際ではまったくない。ただ、いきなり世界を変えようとする事はあまりにでっかすぎるが、自分が内からいい気分になって、にこやかになって、人にやさしくなって、外界に対していい環境になることは、いかに自分が至らなくても、今できる。フリをするだけでも、今できる。それがいつしか習慣になる。

実験的に無理矢理にでも、口角をあげて一日を過ごしてみて。
少なくとも、自分の世界はまったく深刻ではないことに気付くから。
そして、そのリラックスした空気は確かに少しずつ周りにも波及する。
春風亭昇太師匠がおっしゃった「機嫌良く生きる」をひとりでも多く実行すれば、
世界の機嫌が良くなるとわたしは本気で信じている。



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建築家の曽野正之さん。
by akiha_10 | 2012-09-15 01:39 | NY Journal
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